アルツハイマー型認知症の場合、物忘れや身体的症状のほかにも解剖学的な症状が現れます。
アルツハイマー型認知症の場合、解剖学的にみた症状としては、脳の萎縮があります。正常な老人の約10パーセントの減少がみられ、特に前頭、側頭、頭頂葉の減少が著しいのが特徴です。また、脳室の拡大、神経細胞の脱落と萎縮、アルツハイマー神経原線維の変化、老人斑などがみられます。
アルツハイマー型認知症の診断は、まず面接である程度の認知症程度は診断されます。しかし、いろいろな評価尺度を用いることで、よりくわしく認知症の有無や程度を診断します。
人間は、現在いる場所、時間などに対して、周囲の状況と関連して正しく理解することができるのが普通です。これは注意、知覚、了解、判断、記憶などが総合された複雑な認識作用であり、認知機能と呼ばれています。自分が今置かれている場所や時間、環境を把握することを見当識といい、脳の損傷などが起きると、これらの認識能力が失われることがあります。
アルツハイマー型認知症の診断に用いられるテストの項目は、主に認知機能を中心とします。そのほかに行動面や人格面の評価などを含むことが多いですが、それぞれの評価尺度によって異なります。
よく使われるものは長谷川式簡易知的評価スケールです。その他、脳血管性の老人認知症と区別するために、いろいろな身体的検査が行われることもありますが、臨床的にははっきりとした診断根拠とはならないことが多いのも事実です。
アルツハイマー型認知症は、その原因も明らかでないばかりか、現在のところ今般的治療もないのが現状です。そのため対症療法が中心となります。激しい精神的興奮が見られる症状に対しては、向精神薬を使用します。また夜中に騒ぐ患者さんに対しては、入眠剤を用いることもあります。抗うつ薬の使用が有効なこともあります。最近は、脳内アセチルコリンの研究が進むと共に、老年認知症に対してコリン作動性薬物やコリン前駆物質を投与するなどの治療が試みられています。
コリンというのは、神経と神経のつなぎめ、神経と筋肉などの組織とのつなぎめの部分で、情報を伝達する化学物質のひとつです。なかでもアセチルコリンがもっとも強い作用を持っています。アルツハイマー型認知症やその他の認知症でとくに記憶障害が起こるのは、このコリンによる神経間の連絡が絶たれることが原因と考えられています。そこでコリンやアセチルコリンの産生を促す薬、コリンの原料となる薬が、認知症の記憶障害などに有効なのではないか、と研究が進められているのです。
しかしまだ充分な治療効果は上がっていないのが現状です。そのため、家族をはじめとする地域社会全体がご当人の症状を理解し、進行を進めないように力を尽くし、リハビリを継続することが大切となります。リハビリは病気の予防、治療と並び、第3の治療といわれるほど重要なのです。リハビリによって進行を食い止めることはご本人の苦しみだけでなく、家族の負担を軽減する重要な方法でもあるのです。